ひかりとかぜのとおりみち

プリントについて

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プリントについて、少し書きたいと思います。

芸術村で写真展を同時開催している高橋洋子さんのプリント、10年ほど前にプロラボで手焼きしてもらったものだと伺いました。専門用語では「タイプCプリント」と呼ばれるもので、インクジェットではない、昔ながらのカラープリントのことです。
今日、これから見に行こうと思っている亀卦川宏人さんの写真展も同じ「タイプCプリント」を使っていると聞いて、楽しみにしています。
丁寧に作られたカラープリントを目の前にすると、蝋を塗ったような艶やかさと深みのある発色を兼ね備えた、言うなれば「視覚を通じて触覚を刺激する」ような風合いが感じられ、とても良いなと思います。

最近は、写真プリントもインクジェットプリンタを用いて作られることがほとんどです。僕の場合もそうです。
インクジェットプリントとタイプCプリントではそもそもの仕組みに大きな違いがあるため、同じ「写真プリント」であっても別物と考えた方が良いとも言えますし、一方でプリントそれ自体の仕上がりに今や顕著な違いは見出せないことから、敢えて優劣を下す性質のものではないようにも思われます。これらのことを踏まえたうえで、僕は、インクジェットプリントにはタイプCプリントに比して、次のような利点があると考えます。

(1)自宅で、自分自身の手で、納得の行くまでプリントを繰り返すことができる。
(2)大判プリントが比較的安価・簡便に実現できる。
(3)顔料インクと画材用紙の組み合わせにより、旧来の「写真プリント」とは異なる、落ち着いたマットな質感のプリントを作ることができる。

(1)に関しては、利点が8割、弱点が2割だと認識しています。作品制作においては、一から十まで作家が作業することが必ずしも良い結果につながるとは限りません。他人の目と手が入ることで、より良くなる場合があります。
(2)のお陰で、大判プリントだからと言って驚くことも少なくなりました。
(3)こそがインクジェットプリントの真骨頂ではないかと、僕は感じています。

こう書くと自慢のように聞こえてしまうかもしれないので恐縮ですが、個展開催のたびに、プリントの仕上がりを褒めていただくことが多いです。(今回の西会津国際芸術村での展示は違いますが、通常は)販売を前提として展示している以上、プリント品質の向上は必要不可欠だと思っています。
とは言え、何か特別なテクニックがあるかというと、実は何もないのです。ごく普通に、写真のデータをフォトショップからプリンタに向けて流しているだけです。プリンタは、エプソン社製の、少し古い型のもの。
もしいくらかでも人と違っている部分があるとすれば、これまで尋常でない枚数を刷って来たので、その経験値を基に、撮影の段階からプリントの仕上がりまでを見越して作品制作していることでしょうか。
カメラやレンズ、プリンタといった機材はなるべく一つに固定して、使用する用紙も数種類に絞り込み、「こういうデータを作れば、こういうプリントができる」という自分流のレシピを早めに構築すること、そして、繰り返しプリントを重ねながら微調整することが、いいプリントを作るためのコツではないかと思います。
それと、これはかなり我流な考え方なので誰もが応用できるとは限りませんが、プリンタで表現可能な色域であるとか、カラーマッチングの正確性といった、データと理屈の側面に足を掬われないよう注意することも大切です。僕は、プリント全体としての調和が実現できていれば、多少の破綻はよしと考えます。あるいは、少しくらい細部が破綻している方が、人間の目には心地よいプリントとして見えたりするものなのです。その匙加減は難しいのですが、そうしたところにこそ作家の個性が現れるのではないかとも思っています。
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by on-dori | 2013-11-03 13:20 | DP2 Merrill