ひかりとかぜのとおりみち

その人らしさ

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カロス・ギャラリー(仙台市)で開催中の清信一芳さんの個展のことを、この一週間、書こうと思ってなかなか書けないでいた。書くのが難しい、と思った。そして、「難しい」と感じている自分に、忸怩たる思いを感じてもいた。

彼の作品は、少しも難解ではない。とても素直で、率直で、彼自身という人間をありのままに表している。一から十まで「清信一芳らしさ」に溢れている。けれども、では、その「彼らしさ」がどういうものかを、彼を知らない人間にどのように伝えたらよいかという段になると、途端に筆が止まる。上手く表現する言葉が見当たらない。どう言葉を連ねても、そこからこぼれ落ち、網目をすり抜けてしまう何かの方が、はるかに多いように思える。

写真には、被写体ではなく、撮ったその人が写るとはよく言われることだが、だからと言って、シャッターを切りさえすれば「その人らしさ」がそのまま作品に反映され、見る人に伝わるかと言えば、事はそう単純ではない。実際には、「その人らしさ」は青空に溶ける幻のように失われ、反対にその人の企みや欲望ばかり浮かび上がってくる方が普通なのだ。現代の写真表現や、写真批評において、「企みの巧拙」が極端に重要視され、作る方も見る方もそのことに躍起になっているのは、恐らく「その方が簡単だから」ではないかと疑う。

繰り返しになるけれど、清信さんの写真世界では、彼が大切に守り通してきた「彼らしさ」が、何の衒いもなく、静かに光を放っている。僕らは、目の前に置かれた写真を通して、彼の見た世界をもう一度見る。彼の眼差しになる。だから、彼のことを知らない人間であっても、ギャラリーに行き、彼の写真を見ることで、彼を正確に知るだろう。
それこそが写真だ、と僕は思う。


清信一芳 写真展「かげを、いろどる」
カロス・ギャラリー
http://www.kalos-gallery.com
2013年3月9日(土)から31日(日)まで/月曜休廊
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by on-dori | 2013-03-17 21:34 | DP2 Merrill