ひかりとかぜのとおりみち

蝉の話

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「風花画廊/珈琲 楓舎」の入口扉にて。

     * * *

小学生の頃、僕は九州の長崎市に住んでいた。
理由はよくわからないけれど、長崎は蝉の数がやたらと多い街で、あるとき試しに、庭の木に留まっている蝉の数を数えてみたら、大した大きくもない木だというのに、目に付くところだけですぐさま10匹以上数え上げることができた(当然葉っぱの陰に隠れていれば見えないし、数えているうちに飛び立った蝉もいたから、正確な数はわからない)。
ほとんどが力任せにがなり立てるクマゼミ。朝、周囲が明るくなり始めると、「待ってました」とばかりに一斉に鳴き始める。どこにそんなパワーが秘められているのか、一日中鳴いている。動作がノロくて、子供でも簡単に掴まえることができた。
そう言えば、先日テレビで、1982年の長崎大水害から30年が経ったというニュースを見た。いつの間にか30年も経っていたのだなと思う。
30年前の7月23日は、確か午前中はレクリエーションか何かで学校に行っていて、
「雨が降りそうだから早く帰ろう」
と言い合いながら、クラスの友達と別れた記憶がある。夕方からものすごい雨になって、父親はそのまま戻って来られずに勤め先で一夜を明かした。幸い、友人や知り合いで亡くなった方はいなかった。
水害からしばらくあとで、繁華街に出てみると、通りに面したあらゆる店の一階部分が泥だらけになっているのに驚いた。夏の太陽が燦々と照りつける下を、路面電車がゴットンゴットン走り抜けて行った。その夏は、夏休みになったら見ようと思っていた「ドラえもん」だか「ガンダム」だかの映画を、結局見ないまま終わってしまった。
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by on-dori | 2012-07-24 20:07 | DP2 Merrill